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初詣:悠斗

1月インテで配布した無配ペーパーの小話です。
恋愛ED後の悠斗×要。




キンと冷えた空気の中、静かに雪が降り続けている。賑やかに行き交う参拝客の群れで私は不機嫌に膨れていた。
「要、いい加減機嫌直せって。もう少しでお参りの順番も回ってくるぜ?」
 隣にいる十馬が苦笑しながら話し掛けてくる。
「べーつーに。機嫌悪くなんかないよ」
 言葉とは裏腹に私は唇を尖らせて応えた。
 今日は元旦、午前中を実家で過ごした私は悠斗と初詣に行く為に彼が住む町へとやってきていた。
 正月にそっちに行けそうだから一緒に初詣に行かない? と誘ったら承諾してくれたから、喜んで来たというのに。悠斗は初デートの時と同じく十馬同伴で現れたのだった。勿論、十馬と一緒が嫌だという訳ではなく。初めて一緒に行く初詣を、二人きりで行きたいって思うのは別にわがままじゃないと思うんだよね。乙女心として当然だと思うわけですよ。なのに悠斗は未だに恋人同士として二人切りという状況が恥ずかしいというか落ち着かないらしい。
 照れ隠しだとわかってはいるけれど、さりげなく「二人きりでも行きたかったな」と言った私に悠斗は「二人きりでなんていけるか!」と返したのだ。それが私の今の不機嫌の理由である。折角の新年、おめでたい元旦の日。好きな人とお参りに行ける、素敵な日になる筈だったのに何で私はこんなにむくれてないといけないんだろう。今日の日を楽しみに、年末の退魔の仕事や学校の課題も頑張ったっていうのに。
 ちなみに私の右隣にいる悠斗もむすっとした顔のままだ。そんな私たちを見かねたのか、十馬がやれやれと溜息を吐いた。
「…ったくしょーがねーな、二人とも」
 言葉と共にがしっと頭を掴まれて、そのままわしゃわしゃと撫でられる。隣にいる悠斗も同様にされて「なにするんだよ!」と二人で声をあげた。
「新年早々、ぶーたれてないで素直になれよな!」
 大声でそう言うと、するりと列から抜け出して私たちに背を向ける。
「と、十馬? どこ行くんだよ!」
私がいつまでもむくれているから呆れちゃったか? と慌てて叫ぶが、十馬はそんな様子もなく人の良さそうな笑顔を浮かべていた。
「後は若いお二人さんでーってな! 俺は屋台でも冷やかしてくるからよ。要、帰る時にもっかい連絡くれよ」
 そんじゃーなー! と陽気に言って強制的に私たちを二人にした十馬は人の群れの中に消えていった。
「ま、待てよ十馬…!」
 そのまま十馬を追いかけて行こうとする悠斗を私は腕をがっちりと掴んで止めた。
「…今更列から出るのも勿体無いじゃない? 十馬も気を遣ってくれたんだし、折角だからお参りはしていこうよ」
 逃げてしまわないように悠斗の腕をぎゅっと掴む。赤くなった顔のまま口をぱくぱくさせる悠斗に、私はしゅんとうなだれた。無論、腕を掴む力は緩めない。
「悠斗、そんなに私と二人でお参りするの、嫌?」
「ち、違う! 嫌とかじゃなくてっ」
 恥ずかしいだけだ――そう続くであろう言葉を、ぱっと顔をあげることで遮る。にこっと笑って「じゃ、いいんだね」と言う。そしてタイミングよく列が動きだした。
「あ、ほら次の次だよ! お賽銭準備しないと」
 私の言葉に観念したのか、悠斗はポケットから財布を取り出して小銭を持ち身体を前に向けた。
 程なく順番が回ってきて私たちは賽銭箱の前に立つ。十円玉を投げ込んで、二礼二拍手一礼。目を閉じて心の中で願いを唱えた。
 これからも続けていく退魔の仕事の事、家族の健康の事、そして悠斗との事。
 そっと目を開いて隣を見やると悠斗はまだ熱心な様子で目を閉じていた。まだ掛かるかな、と見つめていると目を開いた悠斗がこちらを向く。
「…終わってたのか」
「うん」
 随分熱心だったね、と列の群から離れながら話し掛けると「まあな」と返ってくる。
「何をお願いしたの?」
「背が伸びますように。十馬からより多く一本取れますように。もっと強くなれますように」
 指折り数えながら紡がれる願いは実に悠斗らしい。微笑ましいけれど、願いの中に私が含まれないことがちょっと寂しくて、
「ふーんそうなんだー」
 と言った。すると私の声音に不満そうな色を感じ取ったのか、悠斗は目を瞬かせる。
「何だよ、何か悪いか?」
「悪くないよ? だけど、今年も仲良く一緒に居られますようにとかは願ってくれないの?」
 私はお願いしたけど、と言ってやると案の定ぱっと赤くなった顔が私を見返してきた。面白いくらいに分かりやすい悠斗の反応に口元が緩んでしまうのを抑えながら私は返事を待つ。
 暫く口をぱくぱくとさせながら迷っていた悠斗は、一度口を引き結ぶと観念したように息を吐いた。
「……願ったよ。お前ともっと、会える回数が増えますようにとか、な、仲良く…過ごせますようにとかな」
 言い切ると、ぷいと顔を背けて黙り込む。横から見える耳が真っ赤なのに笑みをこぼして、私はにっこりと笑った。
「ありがとう。あ、そうだ。改めて今年もよろしくね。悠斗」
 上機嫌で言うと、顔を赤くしていた悠斗も表情を和らげる。そしてやっと私が好きな笑顔になって言ってくれたのだった。
「ああ、今年もよろしく。要」



終.
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