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素直な笑顔に出会うとき

珠紀+美鶴。ED後。

*表題はligament(http://ligament.tuzikaze.com/index.html)様よりお借りしました。



素直な笑顔に出会うとき 


 「わぁ、可愛い……!」
 色取り取り、種類様々の雑貨が並ぶ店内。私は思わず声を漏らして立ち止まった。
 品の良い小花柄が散る、縮緬素材の巾着。お弁当箱入れなのか、傍らには同じ文様を使ったお弁当箱とお箸セットが並べてあった。それぞれバラで買えるみたいだ。巾着の色は四種類あって、私はその中でも朱色の巾着を手に取る。
 「可愛いー。手触りもいいなぁ」
 縮緬特有のざらっとしていて、でも生地は柔らかい感触が心地良い。うーん、だとか、あー、だとか心内で呟きながらためつすがめつ眺める。
 「……欲しい」
 あまり触り過ぎるのもどうかと思い、一旦棚に巾着を戻してから私は呟いた。そして「どうしよう」と周りに人がいないのをいいことに、腕組をしてその場で悩み始めた。
 誰か連れがいるなら「これどう思う」と聞けるのだけど、生憎と今は一人。今迷うのなら、一度考えてからまた店に来ればいいが、それも出来ない。何故かと言うと、私が今いるのは都内にあるお店だったからだ。

鬼斬丸を無事に封じることが出来てから暫くしての事。
私は今後も季封村で暮らしていく前に、一度東京に戻ってきていた。一時帰国するという両親に会うことが第一の目的だった。両親の仕事が日本に移ったとしても私は季封村にいることを告げて、了承を得るのには少々骨が折れたが何とか二人とも理解を示してくれた。
了承してくれた両親への感謝と、これからも季封村で大切な仲間達と過ごせることへの嬉しさで胸を弾ませつつ一安心したのが数日前。折角戻るのだからと都合が合った友人にも会い、幾つかの用事も済ませた後、気づけばもう明日には季封村へ帰る日になっていた。
 季封村へ帰れば、こちらまで来ることはそう出来ないだろう。鬼斬丸の封印が為されたと言っても、国が私達を監視している現状というのは変わらないし、あまり外に出ることを良しとしていないのだから。

……そう思い、折角なのでと今日は買い物をする為にお気に入りのお店を巡っているところだった。
服だったり雑貨だったりと色々巡る中で最後に立ち寄ったのが今いるお気に入りの雑貨屋さんである。
手頃な値段の日用雑貨から、ちょっと手を出すのを躊躇う値段の、でも心惹かれるお洒落な雑貨や小物が並んでいる店内。私はうきうきと様々な可愛い雑貨に目移りしながら歩みを進めていた。
 「季封村は自然豊かでいい所だけど、こういうお店が近くにないのはちょっと寂しいんだよね」
 そう小さく独り言を漏らした私の目に飛び込んできたのが、今買うか買いまいか悩んでいる巾着。そこは和柄の雑貨や小物を集めているコーナーだった。
 「うーん、可愛い……」
 じーっと巾着を見つめること数十秒。私は「よし!」と心の中で呟いて、自分に朱色を基調とした巾着を買うことに決める。そして朱色の巾着を手にしたあと、ふと藤色の巾着に目が留まった。
 「あ、これ……美鶴ちゃんに合いそうだなぁ」
その上品な色合いを見つめるのと一緒に、季封村で待つ和服の少女が思い浮かんだ。
美鶴ちゃんとは、鬼斬丸を封印するに至るまでは、相反する立場や抱える思いなどから到底親しいとは言えない間柄だった。年は近いのだし、私としては彼女と仲良くなりたいと思っていたのだけど――。
 けれど、鬼斬丸を封印し村に平穏が戻り。彼女との間にあったわだかまりも解け……少しずつ、仲良くなれていってると、思う。一度村を出る際に玄関で「お帰りをお待ちしています」と相変わらず丁寧な口調で言ってくれた美鶴ちゃんの言葉には親しみが込められていた。それがとても嬉しかった、から。
 (皆に何かしらお土産は買っていくつもりだったけど、美鶴ちゃんは貰ってくれるかな)
 いりませんとか言われたらどうしよう……とまたもやぐるぐるしそうになったけれど、
 「えーい悩んでても仕方ないや!」
 再び独り言を漏らして、私は朱色と藤色の巾着を手にしてレジに向かった。



**



 そしてその後、季封村に帰ってからのこと。
 おばあちゃんに挨拶を済ませ、居間でほっと一息を付いていると美鶴ちゃんがお茶を持ってきてくれた。
 私はここがチャンスだとばかりに一緒に居間に持ってきていたお土産の袋を手にして美鶴ちゃんに声を掛ける。
 「美鶴ちゃん」
 「はい、何でしょうか?」
 返事をしながらお茶を差し出してくれる彼女にお礼を言って、私はえーと、と言葉を続ける。
 「あのね、美鶴ちゃんにお土産買ってきたんだけど……」
 おずおずと巾着が入った袋を卓の上に乗せて美鶴ちゃんへと差し出す。
「……私に、ですか?」
 きょとんとして首を傾げる美鶴ちゃんに、私は少し緊張しながらもうん、と頷く。
 (いりませんとか珠紀様から物は貰えませんとか言うかな、言われたら覚悟してたけど凹む!)
 心内で早口にそう思いながら、顔ではにっこりと笑って話す。
 「あ、開けてみて!」
 勢い良く言う私に圧されたのか、美鶴ちゃんは「は、はい」と言って袋を受け取って中身を出してくれた。
 「これは……巾着、ですか?」
 「う、うん。お弁当箱コーナーにあって。美鶴ちゃんはお弁当を持ち歩くことって殆どないとは思うんだけど。でもコレ見て“美鶴ちゃんに合うな”って思て」
 つい買っちゃったの。
 そう続けた私に、きょとんとしていた美鶴ちゃんは目をぱちぱちと瞬かせた。
 …ええと、私は何かおかしなことを言ってるだろうか。
 「お弁当箱入れだけど、それ以外としても使えるし、そこまで嵩張る物じゃないから邪魔にもならないかと思うんだけど……」
 段々と話し声が尻すぼみになっていく私を見つめて、美鶴ちゃんは言葉を発した。
 「……私に合うと思って、買ってきてくださったのですか?」
 「え?うん。この藤色は美鶴ちゃんだーと思って」
 「……そうですか」
 す、と視線を下に落として巾着を見つめる美鶴ちゃんの声がどこか沈んでいたので、私は内心慌ててしまう。
 (やっぱり私から何か貰うのって迷惑だったのかなー)
 段々と沈んでいく気持ちを感じていた私に、ぽつんと落ちるように美鶴ちゃんが言った。
 「珠紀様は……お人好しですよね」
 困ったような、少しだけ泣きそうな。
 そんな表情で美鶴ちゃんは淡く笑う。
 「え、と……気に入らなかった、なら無理して使わなくても大丈夫だし…何だったらおばあちゃんにでも」
 「いいえ」
 やけにきっぱりとした口調で言う美鶴ちゃんに今度は私がぱちくりとしてしまう。
 「……嬉しい、です。とても。ありがとうございます、珠紀様」
 はにかんだように目を細めて、美鶴ちゃんが微笑んだ。さっきのほろりと零れた寂しい微笑みとは全然違う。
今までも何度も微笑む美鶴ちゃんを見てきたけれど、その度に可愛いなと思って同じ女としてちょっとだけつまらない嫉妬を覚えてしまったりもしたけれど。
 その今まで見てきた笑顔よりも、今向けてくれている笑顔は何倍も可愛くて、彼女が本当に嬉しいと思ってくれているのだとわかった。
 「大切に使わせて頂きます」
 その言葉通り丁寧な手つきで巾着を胸元に寄せて、美鶴ちゃんは笑みを深める。
 「……うん、ありがとう」
 じわじわとこみ上げて来る嬉しさと温かさに自分も笑顔になりながら私がそう言うと、美鶴ちゃんが小さく噴出した。
 「どうして珠紀様がお礼を仰るんですか」
 「え?おかしい?」
 貰ってくれてありがとうって、思ったからなんだけど。
 えへへ、とよくわからない照れ笑いを浮かべる私に、美鶴ちゃんはくすくすと笑うと、
 「……では、私はそろそろお夕飯の準備がありますので、失礼致しますね」
そう言って立ち上がった。 
「素敵なお土産も頂いたことですし、今日は一層張り切って作りますから」
 嬉しいことを言ってくれながら美鶴ちゃんは部屋を出て行こうとする。その背中に私は「あ、待って」と声を掛ける。
 「何でしょうか」
 きちんとこちらに向き直って首を傾げる美鶴ちゃんに、私は居住まいを正した。
 「改まって言うのも何なんだけど……」
言おうと思ったものの、いざ言おうとするとちょっと照れるな、と思いながらも私は笑顔で言った。
「美鶴ちゃん、これからもよろしくね」
 また一緒にここで暮らしていくんだから、仲良くしていこうね。
 そういう気持ちも込めて笑顔を向けると、一瞬面食らったような顔をした美鶴ちゃんは、次には顔を綻ばせて返してくれた。
 「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」
 
曇りのない、素直な笑顔で。





 終.

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